重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖(さとし)。享年29。将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。第13回新潮学芸賞受賞作
講談社『聖の青春』紹介文より 『聖の青春』(大崎 善生)|講談社
作品の概要
■タイトル:聖の青春
■初版:2000年
■著者:大崎善生
作品について
本作品は、将棋棋士の 村山聖九段の人生を題材としたノンフィクション小説です。著者の大崎氏は学生時代から将棋に熱中し、日本将棋連盟にて様々な将棋雑誌の編集を手掛けた方です。村山聖九段を含め多くの棋士とも交流があり、本作品にも羽生善治九段など実在する多くの棋士が登場します。
村山聖九段は29歳という若さで1998年にお亡くなりになられています。幼少期より腎ネフローゼという病を抱え、他の多くを諦めなければならぬことも少なくない中、名人位という目標のために全てを捧げていたと言われています。
あらすじ
「西の怪童」と呼ばれ、名人を目指して歩み続けた村山聖という男の激しくも短い29年の生涯を描く。幼少期より病を抱えながらも18歳でプロ棋士となり、尋常ではない情熱、執念とともに1980年~1990年代の壮絶な将棋界を戦い抜いた人生の記録。
作品の見どころ
この小説は、将棋をほとんど知らずともしっかりと没入することができます。
村山聖九段という人物を深く知る大崎氏に加え、ともに切磋琢磨していた棋士の方々のお力により、彼の人物像やエピソードがかなり詳細まで描かれています。命を懸けた壮絶な勝負の世界だけではなく、師匠である森信雄七段との絆や、思わずクスっと笑ってしまうような一面も多く書かれているため、重さだけでなく温かさや人間味がしっかりと織り込まれています。
棋士としての厳しい日々だけでなく、一人の青年として悩み、笑い、生きた姿は「将棋の話」という枠を越えて、生き方そのものに触れるような読書体験を味わうことができるでしょう。
最後に
私自身、将棋はルールが分かる程度の知識しかありません。小説の末尾にある棋譜を見ても、そのすごさは分かりません。しかし、村山聖九段という人間が生きていたということを知ることができて本当に良かった。また、彼を側で見ていた方に、このような小説を執筆していただけたことを大変ありがたく感じています。
皆様もぜひ、本書を手に取ってみてはいかがでしょうか?
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