父親は、悲しみを飲み込んでいく海になれ――
角川文庫 『とんび』紹介文より https://www.kadokawa.co.jp/product/201101000078/
高度経済成長に活気づく時代と街を舞台に描く、父と子の感涙の物語。
作品の概要
■タイトル:とんび
■初版:2008年
■著者:重松 清
■出版社:角川書店
『とんび』について
2003年から様々な新聞で連載された作品で、テレビドラマ化もされている。都会から離れた田舎の地で、不器用だが誰よりも愛情深い父親と、子供の暮らしや成長を描いた長編作品。
あらすじ
舞台は高度経済成長期の1962年。広島県備後市で暮らすヤスさんと妻の美佐子の間に子供が生まれた。子供はアキラと名付けられ家族は幸せな日々を送っていた。しかしとある事故で家族は母である美佐子を失う。不器用なヤスさんは、周りに支えられながらシングルファーザーとしてアキラを育ててゆく。
時が流れ、大きく変わることもある。しかし、内に秘めた真っすぐな愛情はずっと変わらない。家族を中心とした人々の人生を描く。
作品の見どころ
対照的な親と子の姿
曲がったことが大嫌いで実直なヤスさん、良く言えば人情深く、悪く言えば頑固おやじ。一方息子のアキラは成長するにつれて聡明で誠実な青年へと育つ。タイトルの『とんび』とは、とんびが鷹を生むという言葉をそのまま表しているようだ。相反する2人のようだが、母を失ってから2人で育まれた親子の絆は何よりも深い。
ヤスさんが青年から老人へ、アキラは赤ん坊から青年へと成長する中で描かれる家族の愛は、必ずしも読者自身の家庭とは結び付かなくとも、心に響くものがあるはずです。
人と人との結びつき
物語には、2人の親子の他にも多くの人物が登場します。舞台である広島県備後市は架空の地名ですが、都会とは離れたいわゆる田舎と呼ばれる町です。それ故に住人どうしの結びつきはとても強く、2人の親子の人生にも多くの影響を与えています。良くも悪くも、田舎の結束はしばしば話題となりますが、人と人が密接に寄り添いながら生きている町の姿をとても素敵に描いています。
最後に
著者である重松清さんは、本作以外にも、心に響く多くの作品を生み出している作家です。興味を抱いた方は、ぜひ他の作品も手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上で紹介を終わります。最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント